2021.7.20(火)世界にはばたけ

「竜とそばかすの姫」観てきた。



主演の中村佳穂ちゃんと出会ったのは京都精華大学の特任教授になった2012年。彼女は他学部の2回生だったが、しょっちゅう僕やスチャダラBoseくんの授業に潜りに来て、誰よりも熱心に耳を傾け、勝手に課題に取り組み、どの学生よりも出来の良い作品を提出するのだった(モグリなのに w)。「色をテーマに曲を作る」という課題の説明を聞いて、早速学食の2階にあるピアノを弾きに行き、その日のうちに1曲仕上げてきたこともあった。


その頃から彼女の演奏と歌は圧倒的だった。MCからいつの間にか歌になだれ込んでいく自由なスタイル。コードネームすら知らないのに、圧倒的なグルーヴで歌と一体化したピアノ。「あんたがたどこさ」のカヴァーを歌っているので矢野顕子さんに影響を受けたのかと思いきや、あまり知らないという。学内でピアノを弾いていると、めったに学生のことを褒めない近田春夫さんが近寄って「君のピアノいいねえ」と言ったエピソードも。


彼女は投げ銭のイベントを学内で定期的に続けていた。「高野さんも出てくれませんか?」と言われて、「いいよ〜」と即答した。通算5回くらいは出演したと思う。最初に学食の横のピアノの前でイベントに出た時は、まだ素通りする学生が多くて少々落ち込んだが(笑)、佳穂ちゃんの行動力もあって、回を重ねるごとに動員は増えていった。僕はいつも本気で演った。自分のことを知らない学生たちに歌の力だけでどれだけ届けられるか確かめたかった。ひとたび音楽が始まれば年齢やキャリアなど関係ない。音にどれだけ説得力があるか、それだけだ。(*画像は当時のフライヤー。中村佳穂直筆・イラストも)




佳穂ちゃんが4回生になった2015年には、そのパフォーマンスは京都ローカルシーンで噂になっていて、地元のミュージシャンは「今京都で中村佳穂が一番ヤバイ」と口にした。NHK Eテレ「シャキーン」の挿入歌にも抜擢されて全国的な知名度も少しずつ上っていった頃だった。

2016年1月25日の最後の投げ銭ライブは、月曜日だったにもかかわらず学外からの客も含め180人を動員して大盛況だった。


*ここまでの文は以前noteに書いた「Between TOKYO & KYOTO / 中村佳穂は「京都で一番ヤバイ奴」 (2015)」から引用しています。 https://note.com/takano_hiroshi/n/n8a948de8a60d?magazine_key=mc84b61d33fb1



卒業後の彼女は、持ち前のフットワークで次々と仲間を巻き込み、およそ2年をかけて手練のバンドメンバーと「AINOU」というアルバムを作っていた。僕の知る大学時代の次元とは全然違っていて、歌と言葉とサウンドの実験とグルーヴが全て共存してるのが素晴らしかった。「世界に羽ばたけ〜」 なってツイッターには書いていた。(比喩でなく本気の激励として)ハイエイタス・カイヨーテのネイ・パームやサンダーキャットとも会ったりしていたから、そんなシーンと共鳴して、いずれ海外のフェスに出るんだろうな、と思ってた。


コロナの世界になり、佳穂ちゃんの情報はほとんど届かなくなった。ライブでこそ本領を発揮するタイプだし、バンドのメンバーも全国各地に点在しているのでなかなか集まれず、歯がゆい日々だったと思う。そんな心配をよそに、彼女はこんなあっと驚く新しい世界に果敢にチャレンジして、見事に声優もこなして、その歌の力でいよいよ世界に羽ばたいた。心から、おめでとう!


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