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2021.3.25(木)宴と縁

「INO hidefumi THE SESSION vol.4 featuring 高野寛」配信当日。会場までの道すがら、咲き誇る桜を見ながら。



今回の配信イベントは、キーボーディスト・SSWのINO HIDEFUMI君がホストとなって、毎回ゲストを迎えてセッションするという企画。ベースの伊賀航くんと演奏するのは2014年の星野源君の復活武道館以来(!)INO君、ドラムの北山ゆうこさんとは初めてのセッション。歌心溢れる4リズム。




楽器のセッティングをしていると、ゴンドウトモヒコ君が飛び入りしたいと連絡があった。ゴンドウ君は前回このイベントに出演している。ゴンドウ君との付き合いはとにかく長い。彼がボストン大学から日本に戻ってきた1996年、当時僕が所属していた事務所に彼がバイトで入ることになったのだが、自作のデモ音源も個性的で、ユーフォニアムとディジュリドゥが吹けると聞いて、面白いやつだな、と僕のアルバムで弦アレンジをやってもらったり、一緒にライブハウスで演奏したりして以来。


加えてふたつの新事実が判明。実は今日の会場のRITTOR BASEを主宰する國崎さんがゴンドウ君を事務所に推薦してバイトが決まったこと、そして(今や細野晴臣さんバンドのベーシストとしても厚い信頼を得ている)伊賀君は、元々ゴンドウ君のバンド・アノニマスのサポートに参加したことが縁で、プロデューサーの鈴木惣一朗さんの目に留まり、その縁で細野さんのサポートに抜擢されたとのこと。きっとこんなふうに、どんな音楽も出会いと縁が絡まって、新しい扉を開いてきたに違いない。たとえ時代が変わって、縁のつなぎ目がリアルからネットに代わりつつあるとしても。



音出しが始まる。2度のリハーサル後なので、バンド独自のいいグルーヴが醸し出されている。全く問題なく終了。ちょうど、ゴンドウ君が以前演奏したことのある曲が最後に2曲あったので、そこに参加してもらうことになった。



今回のセットリストは、僕とINO君がお互いのオリジナルとカヴァーを持ち寄って交互に演奏する形で、ヴォーカリストとギタリストの間を行き来する。僕がギタリストとしてステージに立つときは、普段と違う「スイッチ」を入れて、入念に準備しないとうまくいかない。幸い、3月頭に宮沢和史君のライブで「ギタリストモード」に入っていたので、そのままの状態で「SSWモード」を同時に起動して、今回のライブに備えた。えっと、わかりにくいと思うので無理矢理例えるなら、冬は焼き芋屋、夏はわらび餅屋を営む屋台が、この春は特別に同じ屋台に焼き芋コーナーとわらび餅コーナーを併設して街に出た...そんな感じ、なのか?


そういえば、人生初の無観客配信生ライブ「新生音楽(シンライブ)vol.1」を原田郁子ちゃんと一緒に演ったのは去年の3月24日、ちょうど1年前だった。まだ配信ライブが一般的じゃなかった頃の先駆けだった。去年の今頃、桜はまだ咲いていなかった。



誰もが目に見えないウイルスに怯えていたあの頃。ライブハウスがやり玉に上げられ、ライブは自粛、次々中止・延期された。僕はnoteに「ネット配信を使っての「無観客ライブ」も、増えていくかもしれません。」などと書いていた。その記事を読んでくれたGrapher’s Groupの石原さんの発案で「新生音楽(シンライブ)」はスタートした。レコーディングスタジオで、ヘッドフォンをしながらの生配信。なんともいえない不思議な感覚だった。ライブとは全く違う、リアクションのない心許さ。でもアーカイブを確認した後やっと、「新しい表現ができた」という大きな手応えを感じられた。不安と緊張と達成感と充実感、その全てが一年経った今も生々しく残っている。あの頃挑戦できて、本当に良かったと思う。



関係者はライブの火を絶やさないようにと腐心しているが、1年経った今も完全な形での再開はなかなか叶わない。僕も時折リアルなライブを挟みつつ、いろいろな形で月に1本くらいのペースで配信を続けてきた。続ける中で、配信ライブならではの気構えや楽しみ方もだんだんわかってきた。それまでのステージでは、盛り上がりすぎて演奏が雑になってしまうことが時々あった。アーカイブを見ながら、丁寧な演奏を崩しすぎないことが配信でフラットに伝えるための秘訣だと気づいた。そして、その場にはない観客と拍手、画面の向こう側をイメージして、音を届ける。満員で盛り上がれないのは演者もお客さんも歯がゆいが、今はこれしかできないのなら、このバーチャルなライブ空間の中で音楽力を蓄えておく。いつか再開する宴のために。


本番が始まる。



無用な緊張は丹田の奥にしまって、とてもフラットな気持ちで。1曲ずつINO君と話しながら、のんびり進めるのも楽しい。気づけば、自分の曲をバンドと一緒に歌うのは2019年の年末以来。弾き語りも好きだけど、やっぱりバンドは歌の世界を広げてくれる。ギタリストモードの切り替えも難なくできた。最後はゴンドウ君も参加して大団円。



こんな桜の季節に打ち上げもなく、三々五々解散。悔しいけど、まあ仕方ない。帰り道、左手の指先を見たら、楽器を弾きまくっていた学生の頃みたいに指先にタコができていた。これをキープして、いつか野外フェスで弾きまくってやる。アドレナリン全開で眠れないので寝床で少しギターを弾いてたら、急に睡魔に襲われ、そのまま眠りに落ちた。





*アーカイブチケットは3/31まで。僕の写真をINO君がデザインしたTシャツつきチケットもあります。

■ INO hidefumi THE SESSION vol.4 featuring 高野寛


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