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LIVE2018 “Saravah Saravah!”

2024年1月28日、新宿歌舞伎町の映画館で高橋幸宏さんの2018年のライブ映画を観た。

1978年・幸宏さんが26歳の時のデビューアルバム「Saravah!」を、発売40年後にヴォーカル再録・リミックスしたアルバム「Saravah Saravah!」が2018年に発売された。その発売を記念した再現ライブのドキュメンタリーが、映画館用に新たにバージョンアップされて公開されたのだ。




2018年当時のライブはすぐに完売してしまったこともあって、僕は生では観れなかったので、今回の上映を楽しみにしていた。映画は、坂本龍一さんが音響を監修した「109シネマズプレミアム新宿」のみの公開だったので、期待は膨らんだ。


映画館のある辺りには、かつて古い雑居ビルに初代のリキッドルームがあった。「宇宙 日本 世田谷」の頃のフィッシュマンズや、「69/96」の頃のコーネリアスや、「FUNKASY」の頃のスーパーバタードッグなど、いくつかのいいライブを観た鮮明な思い出がある。古いビルだったので、お客さんが全員が一斉にジャンプしたりすると床が少したわむ感じがあって、縦ノリのバンドのライブのときなど、たまに下の階のキャバレーから苦情が来ていたという噂も聞いた。エピソードが20世紀だな....


リキッドルームが移転してからは歌舞伎町に行く機会はほとんどなくなって、「トー横」だのと言われるようになってから今回初めて足を踏み入れた。海外に行くと、なんとなく治安の悪いエリアは雰囲気でわかる。久しぶりに足を踏み入れた歌舞伎町は、外国人だらけで、思わずスリを警戒してショルダーバッグを前に抱えたくなるほど、知らない東京の波動を漂わせていた。心配しすぎなのかもしれないが。




映画館内は周囲とは打って変わってとても静か。プレミアムを冠する劇場のロビーには、坂本さんの演奏する静かなピアノ曲が流れて、ホテルのロビーのようだった。バンドメンバーとして劇中のライブにも出演しているスムースエースのメンバーに遭遇。試写を観たけれど、あまりに良かったのでもう一度観に来たという。


予告編が終わって上映直前に、2022年の坂本さんのモノクロ映像が流れて、「この劇場は日本一音の良い映画館のはず」とのコメント。


映画は、ブルーレイ版にはなかった晩年の幸宏さんのプライベート動画から始まり、ライブのシーンに続いた。音のいい劇場のサラウンドを味わい尽くそうと思い、座席はできるだけ真ん中に近いところを取ったので、没入感が凄い。字幕などの説明は一切なく、なんだか実際のライブを観ているような気持ちになってくる。映像は実際のライブと違ってメンバーの手元や表情がはっきり観れるのが良い。


6年前の幸宏さんは、まだ若々しく元気だった。ファーストアルバムをリメイクした作品の再現ライブということもあって、YMO以前の自分と向き合い直す儀式のようにも見えた。


幸宏さんの真後ろに立つベースの有賀啓雄くんは僕と同い年で、僕のアルバム「tide」でもプレイしてもらっていたり、2001年の「細野晴臣イエローマジックショー」など、何度か一緒に演奏している旧友だが、昨年癌で他界してしまった。


途中、オリジナル盤「Saravah!」のサウンドプロデューサーでもあった坂本さんの、NYからの映像コメントがライブ会場に流れるシーンがあった。映画が始まる前に晩年の姿を観たばかりなので、一瞬時空がねじれたような感覚に陥る。


ライブは、アルバムの曲順を追う形で進む。バンドメンバーは全員僕と共演経験がある人たちなので、自分が観客でありながらも、演奏者の気持ちも手に取るように感じてしまう。難曲「エラスティック・ダミー」での林立夫さんと幸宏さんのツインドラムというハイライトシーンの後は、バンドもどんどん解放されて、グルーヴがヒートアップしていったように見えた。終盤、ゲストの細野晴臣さんが参加して、息を呑むようなライブはストン、と終わった。



 


余韻をかみしめながら会場を出ようとしたら、スタッフから呼び止められた。この後予定していたトークショーの司会の方が急遽体調不良になってしまい、代わりに鈴木慶一さんの対談相手としてトークに出演してもらえませんか?とのこと。もちろん喜んでお受けした。


楽屋で慶一さんと合流、次の最終回を見に来られた細野さんと孫の悠太くんとも挨拶。

慶一さんは、幸宏さんデザインの1980年代の「Bricks mono」のジャケットを着て。






話は尽きなかった。幸宏さんと慶一さんが出会った頃、ビートニクス結成時の話題に興味津津。そして1986年のTENTオーディションと87年のビートニクス2ndツアーで、大学生だった自分がプロの洗礼を受けた頃の話から始まって、いろいろ記憶を遡る。忘れてかけていたこともあふれるように思い出されて、あっという間に時間切れ。




映画の間、幸宏さんはそこにいた。作品を「再生」すればそこに刻まれた時間は永遠に戻る。「芸術は永く、人生は短し」。坂本さんが最期に伝えた言葉が、また蘇った。





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